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2007年01月30日

独白するユニバーサル横メルカトル(平山夢明)

dokuhaku 
独白するユニバーサル横メルカトル

2006年度「このミステリーがすごい大賞」受賞作品。
この本自体は短編集で、8つの話が収録されている。

まず、このタイトルが異常に目をひく。しかし、意味がさっぱり分からない。
「ユニバーサル」と「横メルカトル」という二人組みの話だろか。ぐりとぐらみたいな。
それとも「なんだか分からない名前」を敢えて付ける事でウケを狙ってるだけなんだろうか。語呂いいし。
ユニバーサルスタジオジャパン?メルカトル図法なら聞いた事ある・・・けど、関係ないと思う。

と思いながら読んでみたら、「ユニバーサル横メルカトル図法」で書かれた地図の話だった(あちゃぁ)。

件のユニバーサル横メルカトル図法の道路地図帳を愛用するタクシー運転手。
彼は仕事の傍らむかつく乗客をぶっ殺しては死体を埋め、その埋めた場所を丹念に
血糊で地図帳へと記入する、という事を繰り返していた。
だがある日、うっかり交通事故で死んでしまう。
地図帳は息子に遺品として引き取られるが、その息子は親父以上に筋金入りの
猟奇連続殺人者だった・・。どうする地図帳!というのがあらまし。

・・って、地図帳にどうするもこうするも無いだろう。とは思うのだが、そこはそれ。
というのも、この話の一人称がなんと「地図帳のもの」なのだ(ババーン)。
「ああ、そりゃあ独白するユニバーサル横メルカトルだわ」と夜中に一人で痛く納得。

なんでもこの地図帳が言う事には、地図というのは代々意志を持っていて、主人が地図を見る時には意図的に
より良い道を見やすくしたり、悪い道を隠したりしてるらしい。その上、同じ地域の地図は互いに継続した知識を
持つ事が出来、脈々と情報を受け継いでいたり、地図どうし会話が出来たりするのだそうだ。
可愛がってくれた主人を手助けしたり、一生懸命に諭そうとしたり。
カーナビを「ただ情報を垂れ流すだけの木偶」みたいに言ったりもする。
地図は自分の仕事に誇りを持っている。人類は誰も知らないけれど、
地図は意識的に人々をよりよい方向へと導いているのだ。
・・お、SF。
いいですねぇ、こういう大風呂敷。僕大好きですよ。

 というのはさておき、正直、この本に掲載されている話は一様に皆グロい。
この話の中でも、人の皮を剥いだりとか普通にする。
暴力描写が凄惨極まりなく(これまで読んだどの小説よりも凄まじかった)、各話のコアを成す部分というのも
人間の醜さ、黒さが臆面無く押し出されていて、決して万人に薦められるものではない。
むしろ、小学生が読んでたら「ちょっとこっち来い」と保健室に連れて行ってカウンセリングを受けさせなければ、
と思ったほどだ。

だが、先に挙げたような地図の設定や、「死体を食って処分する始末屋稼業を営む、元サーカスの大食い男」
「元自衛官のシャブ屋が、ジャングルの奥地に金にものを言わせて作った王国」といったむやみに食指をそそるダークファンタジー、
「虐待を受けて人生に絶望した女の子が殺し屋に望みを託す話」、「拷問のプロの懺悔」といった、
悲哀がテーマの話もあり、その上、毎話毎話で読者を良い意味で裏切るのだ。
そのバラエティーの富み方、ストーリーテイリングの巧みさはさながら
「鉄道屋(ぽっぽや)・悪魔超人編」の様相を呈している。

そこに「オペラント条件付け」「フェルマーの最終定理」「ファキール・ムサファーの人体改造」などの
各種サブカル的ガジェットも彩りを添えていて、まるで悪い夢でも見るかのような極彩色のサバト状態を
楽しめる仕上がりの一冊だ。

本気のサディストの方は是非、ご一読を。

投稿者 mozi : 23:41 | コメント (0) | トラックバック

2007年01月16日

野獣死すべし(松田優作版)

 yajuu
野獣死すべし

「リップバーンウィンクルって知ってますぅ?」。
名言だと思う。松田優作の鬼気迫る演技と相まって、さっぱり意味が解らない。もう全く日常会話じゃない。
要するに非日常!つまりはイッちゃってる!・・・そう、とことん狂った映画でございました。

冒頭に引用した台詞は優作扮する主人公が、自分をに疑いを持って追いかけてきた刑事を脅す時に使うものなんだけど、
この時の優作はホントにホントにホントーーゥに狂ってる!必見。

でもね、映画全体を通して狂ってんだけど一貫性を感じた。
「狂人とはかくあるべし」みたいな。

オレの日常はこっちなの!法律とか倫理とかには関わってらんないの!
っていうズレた感覚。まさにノワール。そう、映画ってこうじゃなきゃ。

途中、主人公一味が銀行強盗をするシーン中、
ちょっといい仲になってたお嬢さんに正体を感づかれそうになる。
大体の場合、ストーリー的にはお嬢さんを助けてしまって後々面倒なことになったりだとか、
お嬢さんと悲しい逃避行だとか・・って感じになりそうなもんだけど、優作はその場でお嬢を射殺!!
冷酷!!冷酷!!悪事そのものに全生涯賭けてます!
・・・まぁ、その殺しが結果的に仇になるんだけど、自分的には映画観てる間中、
優作の狂気が予想を上回り続けてくれたので良し。

この「狂った倫理に命賭けるのが当たり前!」って感覚は
コミック版の「ヘルシング」読んでる感じに近いかも。

自分内痛快作品ランキングがこの映画で更新されました・・。ビバ・ピカレスクロマン。

投稿者 mozi : 00:35 | コメント (0) | トラックバック

2007年01月11日

夜は短し歩けよ乙女(森見登美彦)

yoruha
夜は短し歩けよ乙女
 森見登美彦の真骨頂、「モテたことなんか一回もないのオタク男子が天然ボケの女の子に悪意無く振り回されて勝手に七転八倒」 の構図の現時点でのハイエンド(言い切り)。

 これまでの作品、「太陽の塔」、「四畳半神話体系」は男子がのたうち回る様が非モテ的に「くぅ、解る解る!」という感じで、 そこがメインの楽しみだった。

 しかし、今回はそれだけではない。

 この、何というかヒロインの可愛さよ!

 健気で天然ボケでオタク気質で元気で、黒髪で。
もうたまらんね。天然ボケ&黒髪&オタクというのはある種、最強かもしらん。

 ・天然ボケ=可愛らしさ
 ・オタク気質=物事を自分の目で見れる
 ・黒髪=時流に流されない芯の強さ

 うーん。ナイス(上記、独断です)。
 本作品は彼女の魅力を遺憾なく、またもっとも上手く読者に訴求できていた、と思う。

 そしてその恋を彩る様々なガジェットの濃さがまたいい。

 「偽電気ブラン(秘密の模造酒)」
 「京福電車研究会(京都と福井を結んでいた架空の電鉄を研究するマニア集団)」
 「詭弁論部(詭弁を弄する事に賭ける若者集団)」

 確実にオタク心、SFマインドを異常に刺激してくるラインナップ。
 きっと、絢爛豪華の言葉はこういう時に使うのだ。うん。

 これだけの熱くなる要素を全てきっちり絡ませながらもキチンと「泣けるいい話」に仕立て上がっているのは森見氏の文体、 「純文学風にくだらない事をキチンと書く」が威力を発揮しているからだ。 森見さんお得意の 「天然黒髪少女に翻弄されるヘタレ男子の恋愛模様を情緒豊かに見せる」の図式がここに来て益々冴え渡って来た来た来た。

純文学好き、SF好き、オタク少女好きは是非読まれたし。

投稿者 mozi : 23:17